理事長のコラム「本のある風景」

No.11 安本末子・著「にあんちゃん」

「高串にせきりのようなひどいでんせん病が、はやりました。つぎからつぎへおおぜいの人がせきりにかかりました。そのころ、高串には増田という名前のおまわりさんがおりました…」

◆唐津市肥前町高串。明治の時代、この小さな漁村に広がったコレラの防疫活動で殉職した巡査・増田敬太郎を祭る「増田神社」がある。日本で唯一、警察官が神として祭られている神社で、地元の人たちから「マスダサン」として慕われている。

◆冒頭の一文は、高串のすぐ隣に住んでいた安本末子さんが1953年7月22日に書いた日記である。安本さんは当時小学校四年生で、ベストセラー『にあんちゃん』の著者。毎年七月第四日曜日に行われる「マスダサン」の夏祭りについて兄の話を引きながら感想をつづっている。

◆「でんせん病のたねは、私がみんな持って行きますから、私が死んだあとからは、みなさんも、二どとおこさないように、よく気をつけてくださいといわれたそうです。それから高串ではでんせん病というでんせん病は、どんなものでも、はやらなかったそうです」

◆せきりはコレラの間違いだが、子どもらしい感性で、町のお巡りさんが〝神〟になっていった様子を写し取っている。今年も夏休みさなかの7月25日、夏祭りが行われた。25歳の若さで死んだ増田巡査の遺徳をしのび、献身の尊さを教えられる暑い夏の祭りである。

理事長 富吉賢太郎

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