理事長のコラム「本のある風景」

No.2「野口英世の母・シカの手紙」

 野口英世(1876~1928年)の母シカが米国の研究所にいる息子英世に書き送った手紙。魂を揺さぶられるような文字で綴(つづ)られている。

◆福島県・猪苗代湖の近く、生家に隣接して立つ「野口英世記念館」に展示されるその手紙。1度読んだぐらいではとても判読できない仮名ばかりの手紙。まるで文字を覚えたての幼児が書いたようなたどたどしさ。句読点のルールも完全に無視されている。

◆「おまイの。しせにわ。みなたまけました。はるになるト。みなほかいドに。いてしまいます。わたしも。こころぼそくありまする。ドかはやく。きてくだされ。はやくきてくたされ。いしよのたのみて。ありまする(中略)」

◆お前の出世にはみんな驚いている。春になるとみんな北海道に行ってしまう。私も心細い。どうか早く帰ってきてくれないか。はやく帰ってきてくれ。一生の頼みだ-。結びは「いつくるトおせて(教えて)くたされ。これのへんちち(返事)まちておりまする」

◆異国で研究に励むわが子の成功を喜び、一度でいいからその帰りを待ちわびる母の愛情がにじみ出ている。英世を思うシカの愛の深さ。すごみさえ感じられる名文といえようが、精いっぱいに覚えたであろうその文字にも目頭が熱くなる。

◆シカは自分の不注意で幼いわが子に一生消えないやけどを負わせた-と自分を責め、食うものも食わないような極貧の中で息子の学費を工面したという。それに応えて英世は、上京する時に「志を得ざれば、再び此(この)地を踏まず」という決意を柱に刻んだ。

◆この母にしてこの子あり。時代はさかのぼるが、こんな母子の姿を思えば、ぐっと力も出てこようというものだ。

理事長 富吉賢太郎

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