理事長のコラム「本のある風景」

No.7 ジャン・ジオノ原作「木を植えた男」

 「ワインカラーのときめき」とか「千の風になって」など素敵な歌もある作家の新井満さんは、奥さんから「一生のお願いだから読んで」と勧められてこの本を読んだ。感動して後に夫婦共著の写真紀行文集『木を植えた男を訪ねて-ふたりで行く南仏プロヴァンスの旅』を出版している。

◆私はと言うと10年ほど前、80歳をとうに過ぎた高校時代の恩師から「この本は、涙なしには読めない本だ。爺さんが木を植える話だ」と勧められて手にした。感動が今でも残っている。この『木を植えた男』は、ジャン・ジオノというフランスの作家が50年以上も前に書いた短編『木を植えた人』が原作。フランスの山岳地帯にただ一人で木を植え続け、荒れてやせた地を森に蘇らせた男の話。この原作で描かれたフレデリック・バッグの絵本が『木を植えた男』。

◆妻と子どもに先立たれた孤独な羊飼い。愛犬と一緒に静かに暮らしていたが、ある日「死ぬ前に何か一つぐらい世の中のためになることをやって死んでいきたい」と、考えに考えたあげく「そうだ、木を植えよう」。ドングリの実を拾い、それを選び、穴を掘って植えていく。木の成長は遅々としたもの。自分が生きている間にその緑を見ることはないかもしれないのに・・。

◆私の恩師は「それでも黙々と植えていく羊飼いの姿に涙を流さずにはおれなかった」と自身も齢八十を超えた境遇を重ねたのだ。種はやがて芽を出し、枝を伸ばし、木になり、林になり、緑したたる森になった。何の見返りも求めず、ひたすら一つ事を成し遂げようとする人がいる。この世の中を変えるのはそんな無私無欲の行為かもしれない。世の中の感心な人たちが取り組む寡黙な善行には敬意を抱かずにはいられない。

この本は清和の図書館にもあって、うれしく思いました。

理事長 富吉賢太郎

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