理事長のコラム「清和の窓から」

No.17 最後の1本のワラ

先日の芸術鑑賞会の演劇「君はいくさに征ったけれど」。いかがでしたか。命の重さと命の大切さを学んだと思う。と言うことで、今回は・・・。

砂漠の民はラクダを「砂漠の船」と呼ぶのだそうだ。灼熱の砂漠の移動にラクダは欠かせない。あの大きなこぶの中には脂肪が蓄積されていて、それを消費しながらラクダは旅人の重い荷物をかついでカラカラの砂漠を歩いていく。

ラクダが背負った耐えうるぎりぎりの重い荷物。だが、その背にもう1本のわらを乗せただけでラクダはへたって倒れてしまう。その状況を「the last straw(最後の一本のわら)」というのだそうだ。かついでいる荷物の重さに耐えて耐えて、そして、わら一本で…。

ずいぶん前のことだが、大阪・中之島中央公会堂で開かれた日本自殺予防シンポジウムに参加した。ある大手民放記者が匿名を条件に自身の自殺体験を切々と吐露した。あの神戸連続児童殺傷事件を担当していたこの記者は連日、取材に忙殺された。ひと月の残業が250時間を超えた。

朝7時から明け方の2時、3時まで。シャワーを浴びて仮眠を取り、また取材。そんな生活が何カ月も続くと精神に変調をきたす。自殺を図る前日、ちょっとした上司の叱責(しっせき)。これがこの記者への〝1本のわら〟となった。「死んだら楽になる」。そうしか考えられなかった。

「一人で耐えきれないほどの荷物を背負っている者は誰でもうつ状態になると思った」と言い、そんな人たちを孤立させない社会づくりを訴えた。思いやりとやさしさ。いじめや排除など言語道断。孤立は誰もが辛い。「最後の一本のわら」の重さを誰もが知る社会の実現を―。

理事長 富吉賢太郎

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