清和の窓から

2025.06.17

理事長コラム「清和の窓から」115      宇沢弘文さんの教え・・啐啄(そったく)

宇沢弘文さんの教え・・啐啄(そったく)

 

経済学者宇沢弘文さん。もう亡くなって10年になるが、日本学士院会員で文化勲章受章者でもあった。旧制府立一中(現・都立日比谷高)から一高、東大。卒業後は米スタンフォード大学でも教壇に立ち、自らの学問・研究を「“社会の病”を治すための経済学」と言い、社会の痛烈な批判者としても知られた。

 

例えば、「バブルを引き起こしたのは政治家、官僚、銀行員だが、その不良債権問題は“不良銀行員”の問題でもあった。彼らは反社会的、ときには犯罪的なプロジェクトにもカネを貸した。そして責任をとらない」と強烈だった。

そんな宇沢さんの教育論も刺激的で、「学生の能力を測る関数に“素直さ”や“きまじめさ”も入れた方がいい」などと、面白かった。宇沢さんは各地の大学で、学生たちの聴講態度を見ながら「大学に入学してからでは、なかなか学習態度は変わらない。変えるならその前だ」と、中高一貫校の設立を呼び掛けていたこともある。つまり、人として、とても大切な文(知力)・武(体力)・心(情意)の三つを鍛えるには中学、高校時代が大事な時間ということです。

佐賀清和学園は、39年前から県内で最初に「中高一貫」教育に取り組んでいますが、宇沢さんの言う中高一貫教育は、宇沢さんが学んだ旧制中・高にあった「啐啄(そったく)」がよみがえるような学校をイメージされていたようです。

 

「啐啄」の「啐」は鳥のヒナがかえろうとするとき、殻の中からヒナが殻をつつくこと。「啄」とは親鳥がヒナに返答するように外から殻をつつき返すこと。このヒナと親鳥の絶妙な行動、連携で無事にヒナはかえり、育っていくのです。なるほど、そんな生徒と先生がいる学校、教育をさらに充実させたいと思います。

 

理事長 富吉賢太郎

 


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