学校法人 佐賀清和学園

理事長コラム「本のある風景」

Landscape with a book

No.43 黒木 亮・著「冬の喝采」

ページをめくりながら急に目頭が熱くなった。久しぶりの感覚である。本を読んで涙するのは・・・。600ページを超える本書は、早稲田大学時代、箱根駅伝の選手として走った事のある作者自身の自伝的小説といっていい。

1976年から79年、中村清監督が率いる早稲田大学競走部には箱根駅伝史にさん然と輝く瀬古利彦がいた。その異次元の天才ランナーと筆者は競走部の同期生。誰もが認めるスーパーエース瀬古とは違い、長い下積み生活、ケガとの戦い。そして、連日のように罵詈雑言を浴びせる型破りのカリスマ指導者中村監督との愛憎。

著者は度重なるけがを乗り越え、箱根駅伝に2回出場。アスリートの過酷な鍛錬は経験のないものには凄いという言葉しかないが、それでもスポーツと勉強の両立、仲間と心の交流、厳格というより異常とも思える監督との間合いの取り方などは実に感心させられる。例えばカリスマ中村監督が若きアスリートを叱咤するときの口癖、「若い頃に流さなかった汗は、年老いてから涙となって流れ出る」という言葉などは、実に含蓄がある。

大学卒業後は銀行マンに。そして海外赴任の後は証券会社、総合商社に勤務し、貿易金融など難しい案件をこなす一方で執筆活動もこなした。そんな著者の現在は、厳しい部活で得た学びの証と言っていい。

憧れの箱根を目指す大学長距離ランナーたちの姿はそのまま感動ものではあるが、本書には生まれて7カ月で生き別れた実父母との運命的な出会いも描かれている。見たことも、記憶もない実父は、実は明大競走部の長距離ランナーとして、同じく箱根を走っていたのだ。長年にわたって陸上競技の審判員を務めていた実父。昔手放した息子が各種大会で頑張る姿を遠目に何度も目にし、名乗ることなく無言の応援をしていたという。私が不意に込みあげるものを感じたのは、このシーンである。親と子とはこういうものかとも教えてもらった。

本の素晴らしさ、若い皆さんも、何か読んで涙する経験をしてください!

理事長 富吉賢太郎

2021.09.14

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