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理事長コラム
清和の窓から
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「君には君の歌がある・・・」
東京在住でしたが、佐賀清和学園のすぐ近く、佐賀市諸冨町出身で長年、児童詩教育に携わってこられたすごい詩人、ご存知でしょうか。10年ほど前、89歳で亡くなられていますが、その人の名は江口季好さんという人です。
新聞社時代、江口さんからよく本を贈ってもらっていました。ある日、丁重な手紙と一緒に届いた1冊は、日本語教育学会員や日本作文の会常任委員を務めた江口さん自身の研究書でしたが、とでも分かりやすい内容だったことを思い出します。
詩は難しい、苦手だ!という人もいますが、北原白秋賞を受賞した江口さんの『児童詩集 はとの目』(百合出版)など、その詩のやさしさは読む人に何とも言えない余韻を残してくれます。私の本棚にある『輝け いのちの詩』(小学館)という詩集には「あなたへの詩人52人からのメッセージ」という副題がついている。そう、やはり江口さんの詩が載っています。編集者・水内喜久雄さんから「同じ地球に生きている者として、今を生きようとしている子どもたちに言葉を贈ってほしい」という呼びかけに共鳴した江口さんが、この本のために書き下ろした『君には君の歌がある』。何という温かさ。感動してボーッとなってしまうほどです。
「あれから、一年たったね。君の笑い声が家中に響くようになった。今、お父さんは君にもう少し話しておきたいことがある」と、いじめを告白し、乗り越えた息子への父からの手紙の形式となっている。わが子を信じるということがどういうことか、温かい言葉が押し寄せてくる。
「…もちろん、君にこんな父さんの考えを押しつけようとは思わない。君には君の歌がある。喜びがある」。どう生きていけばいいか迷っている子どもたち。わが子とどう間合いをとっていいか分からないでいる大人も読んでほしい詩の本です。
さて、佐賀清和高校の素晴らしい卒業式が終わりました。17日は佐賀清和中学の卒業式です。清和を卒業した先輩たちもそうですが、これからも清和で学ぶ人たちにも贈りたい言葉、それは「君たちには君たちの歌がある。喜びがある・・・」。3月は巣立ちの春、そして4月は入学、出会いの春ですね!
理事長 富吉賢太郎
本のある風景
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柳澤佳子・著「お母さんが話してくれた生命の歴史」(岩波書店)
人の命の不思議さと尊さが、じわっと押し寄せてくるような本です。
「あなたをつくっている60兆の細胞/その祖先は遠い遠い昔に海の中で生まれた/細胞は36億年の年月をかけて/あなたのいのちを支えられるまでに進化した」
フリーライター柳澤桂子さんの『お母さんが話してくれた生命の歴史』(岩波書店)はこんなやさしいフレーズで命の大切さを誘ってくれる。「小学五年ぐらいの子どもの読書力で楽しく読めるように」という柳澤さんの思いがこもった本ですが、小学生だけでなく中学生も高校性も、誰でも勉強になります。
この本は最初から最後まで、生命科学者でありエッセイスト、歌人でもある柳澤さんが語りかけるように文章が続きます。「地球ができたときを1月1日として、現在までの時間を1年間にたとえてみると、いのちが地球に芽生えたのは2月17日ころになります。生き物が陸上に上がってきたのが11月の終わり、そして人間があらわれたのは12月31日の午後8時ごろです」
生命の誕生の歴史を、やさしくかみくだいて、かみくだいて説きながら、かけがえのない命の大切さをしっかりと教えてくれる。「人の命は地球より重い」とはありふれた言葉ですが、そのありふれて、当たり前のことが昨今、あまりにも粗末にされてはいないか、と思いませんか。
ネットで簡単に見知らぬ者同士が出会い、いさかい、時には命に関わるような事件が後を絶たない。柳澤さんがいうように、とても不思議な、そして貴い命のことを子どものころからしっかり教わっていれば…。生命の誕生から気の遠くなるような長い時間がかかって、世界でたった1人の特別な自分になったことを知っていれば、そうそう簡単に自分を粗末にはできないはずだと思いませんか!
命を大切にするということは、自分を大切にすること。もちろん、自分の周りの生きている人すべてを大切にすることだと思います。今年も残り、あと1カ月になりました。
理事長 富吉賢太郎