清和の窓から
理事長コラム「清和の窓から」105 人の心は見えますよ!
人の心は見えますよ!
昨日(20日)、パソコンを開いたら、1通のメールが届いていました。読みながらとても嬉しく、朝から幸せ気分になりました。その〝幸せメール〟をそのまま紹介しましょう。
「選抜女子駅伝北九州大会に出場された佐賀清和高校の皆様へ」
19日に行われた「選抜女子駅伝北九州大会」への参加、お疲れ様でした。私は、中間地点の控え場所となった八幡東生涯学習センター尾倉分館館長の中玲子と申します。皆さんがお帰りになられた後、見回りをしているとトイレに心温まるメッセージ付のトイレットペーパーがさりげなく置かれているのを見つけました。緊張の中、こんな気配りのできる高校生に感動しました。本当にありがとうございました。これからも素晴らしい高校生活をお過ごしください。
駅伝中継の終わった後、お世話になった中継所への感謝と心配り。陸上部の皆さんの気持ちがそのまま伝わってくる礼状ですね。「人間性の涵養」を創立以来の教育目標とする本学園の、まさしく〝清和の心〟が見えるようです。と、言うことで、今回は「人の心は見えますよ!」というお話をしましょう。
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『黄昏のロンドンから』で知られるエッセイスト木村治美さん。今も忘れられない苦い経験があるそうだ。ある教育講演会の締めくくりに会場の保護者たちに呼び掛けた。「お母さん、お子さんが学校で使う雑巾、その雑巾だけは買ったものでなく自分で縫ったものを持たせてくださいね」。ところが会場から「買った雑巾と、縫った雑巾はどう違うんですか!」と質問が。
思いもしない質問に、木村さんは「それは、こころの問題で…」と、しどろもどろになってしまった。すると質問者は「人の心って見えるんですか?」と畳みかける。それ以上何も答えられなかった木村さんは疲れ切って会場を出た後「・・あの時、人の心は見えます。人の心は、人の行動を通して見えるんですよ」と、どうして言えなかったんだろう―と後悔しているというのです。
同じような〝人の心〟のエピソードをもう一つ。
評論家高田保が神奈川・大磯に居を移したのは1943年のこと。引っ越し荷物を入れようと押し入れを開けると小さな包みがあった。中には上等の障子紙と新しい手縫いの雑巾。高田は包みをそっと置いて引っ越して行った前の住人の心遣いに心打たれ、体が震えるほど感動したという。こうなると障子紙と雑巾はもはや単なるモノではなくなり、洗練された心の表現になるのです。
単なるモノが心の表現へ。確かに目には見えない人の心。だが、その人の身のこなし、立ち居振る舞いを通して人の心は見えるのですね。ちなみに押し入れに包みを置いていた前の住人は、かの島崎藤村の奥さんだったそうです。さすがですね。
清和の皆さんの日常に、人への心遣いと、感謝する心が確実に育っているということを知って、本当にうれしく思います。
理事長 富吉賢太郎