清和の窓から

2025.05.23

理事長コラム「清和の窓から」113     たかが清掃と言うなかれ!

たかが清掃と言うなかれ!

 

清和で学ぶ人は誰でも、授業が終わったら教室や廊下、トイレの清掃。時には校舎周辺のゴミ拾い。この当たり前の日常がとても大事だという話をしましょう。

 

輸入車販売で有名なヤナセ。佐賀にも営業店がありますね。その二代目社長は“外車の神様”と言われた梁瀬次郎さん(故人)。米国自動車殿堂入りの実業家で、現役時代は誰もが認めるジェントルマンだったそうです。また、実業家でありながら、洒脱なエッセーも数多く、「エレベーターの前に落ちているゴミを社員を呼びつけて拾わせる人がいるが、私は気が付いたら自分で拾うことにしている」といった発言集を読んだ記憶があります。ごみや清掃・掃除に対する見識で、一見ささいなことの実践が劇的な全体効果を上げていくという大切な教えです。

かつて、ディカプリオ主演の「ギャング・オブ・ニューヨーク」というハリウッド映画がありましたが、1980年代までのニューヨークは毎日のように殺人、暴力の重罪事件。地下鉄は落書き、破損、火災。無賃乗車、物ごい、嫌がらせは日常茶飯の無法地帯だったようです。

ところが90年代になって犯罪発生が急激に減っていった。この変ぼうの要因として興味深いのが、犯罪は無秩序の結果がもたらす―という二人の犯罪学者の「割れた窓理論」。割れたままの窓ガラスをほっておくと他の窓も必ず割られ、たちまち次のビルから向かいのビルに伝染する。落書きや風紀の乱れといったささいなことが“割れた窓ガラス”と同じで、深刻な犯罪の呼び水になるというものです。

ということで、ニューヨークの地下鉄公団は徹底して落書きを消した。1台でも落書き車両があればその場で消すか、切り離すか。1994年、当選したばかりのジュリアーニ市長はこの戦略をニューヨーク全市に広げ、この徹底した清掃作戦が無法者たちへの強烈なメッセージとなり、ニューヨークは犯罪都市を返上したのです。

「能力の個人差はせいぜい5倍だが、意識の差は100倍の結果を生む」という言葉もありますが、毎日の清掃が人の意識を変えていく。まさしく「たかが清掃と言うなかれ!」です。整理・整頓・掃除・・頑張りましょう。

 

理事長 富吉賢太郎


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