本のある風景
理事長コラム「本のある風景」62 藤井 文・闘病日記「手の届くところに」(文芸社)
藤井 文・闘病日記「手の届くところに」(文芸社)
この本は、娘が難病のベーチェット病、それによる合併症と闘いながら、その中で感じた様々な想い・・・苦しみ・恐れ・悲しみ・孤独・喜び・感謝・感動・生き方・・・など、2002 年から2007 年までの6年間に公開してきた日記計360 編あまりの中から抜粋した闘病日記集です。この日記をこのような形で発表することで、健康な方々へは、『病人の悲しみや苦悩』を、現在闘病中の方々へは『励まし』を、そしてあらゆる方々へ『癒し』を伝えていければと思っています。父 (前書きから)
難病と闘いながら生きることがどんなにつらいことか。恐らく当人しか分からないだろう。押し寄せる不安や焦燥感。孤独と死への恐怖。べーチェット病と約20年間、気丈に闘って、そして33歳の若さで逝った佐賀市の藤井文さん。文さんは自分の運命を受け止め、入院生活を送りながらインターネット上に闘病日記を書いた。折れてしまいそうな心を自ら鼓舞するように。
「〝病は気から〟ってコトバがキライです。そのコトバをヒトから言われるのがもっとキライ。(中略)自分で自分に言い聞かせる分には良いと思う。でも病気で苦しんでいるヒトに、健康なヒトが言うコトバではないと思う」(2002年5月7日)
元気で明るい女の子だった文さん。小学6年生になって時々、原因不明の微熱に襲われた。中2のころからは入退院を繰り返し、難病指定のベーチェット病と診断されたのは高3の時。頑張って大学も卒業できたが、やはり入院生活。それでも人とつながっていたいとネット上で日記を書き続けた。
文さんの正直でストレートな言葉は、同じく病と闘っている人を励ました。文さんは「ネットができない人にも読んでもらいたい」と、誰でも読めるよう日記を本にしようとしたが病状の悪化がそれを許さなかった。そして文さんが亡くなって3年。父親の賢介さんが、その願いを叶えてあげた。
「病といつも一緒」という非日常的なことが日常だったという文さんの言葉は、闘病中の人には励ましとなり、健康な人には〝病の悲しみと苦悩〟を共有させてくれる。本書のタイトルは、闘病中の文さんが、自分だけでなく誰かをも励ますために、いつも「手の届くところに」に置いていたのがこの手紙(日記)だったからです。
なんでもいい。本を読むことで学ぶこといっぱいあります。皆さんもこの夏休みに、とっておきの1冊を見つけてください。
理事長 富吉賢太郎