清和の窓から
理事長コラム「清和の窓から」121 イワシ1匹に米3合
イワシ1匹に米3合
今年は昭和100年、そして戦後80年。2025年、新聞やテレビでは戦争体験者の証言などいろんな検証特集が目立ちましたね。清和の放送部の皆さんも地域に出て、戦後80年イベントで朗読や司会進行など協力してくれて誇りに思います。
さて、佐賀市では現在市議会議員の選挙(19日投開票)が行われていますが、戦後初めての総選挙は1946(昭和21)年4月10日に行われました。女性が初めて選挙権を行使した選挙です。衆議院議員定数は468(現在465)に全国から立候補したのは2771人。佐賀は中選挙区で定数5。立候補したのは実に37人。小選挙区の今と違ってビックリするような多数激戦の選挙だったのです。
「イワシ1匹に米3合」。この言葉は、その時の選挙で多くの立候補者が掲げたスローガンのひとつです。焼け野が原となった日本の国づくり。日本が戦争に敗れ、食べるもの、着るもの、住む家さえも失った人たちに、「せめて1日に3合の米とイワシ1匹分の栄養を!」という切実な願いがそこにあります。
しかし、そんな貧しい時代であっても、日本人は「おすそ分け」とか「お互いさま」とかいって、分かち合いながら心をはぐくんできました。貧しくてもみんなの目が輝いていた戦後の1950年代。それから、60年代になるとスローガンは「バスに乗り遅れるな」。乗れるバスは1台しかないからみんな飛び乗れ。みんなガンバレ。バスに乗り遅れるのはお前のせいだ―といってハッパをかけられた。その大号令を信じ、他人は押しのけてでも何とかバスに乗ろうと頑張った。「自分だけは」「自分の子どもだけは」と・・・。
でも、その時、バスに乗ろうとしても乗れない人がいると、気が付いた人たちもこの日本にはいっぱいいたのです。2005年ノーベル平和賞受章者、ケニアのワンガリ・マータイさんの来日スピーチで、「日本には素晴らしい平和の言葉がある。それは〝モッタイナイ(MOTTAINAI)〟。世界各地の戦争、紛争、飢餓や貧困。それらはすべて奪い合いです。モノを大切にする、分かち合う心〝モッタイナイ〟を国際語にしましょう!」と呼びかけられたのです。
確かに、昨今の世の中を見てみると、例えば、世界の貧困と飢餓に苦しむ人たちには信じがたい美食、過食、飽食。それでもまだ懲りないのか、フードファイターなどといって〝食〟を愚ろうするようなテレビ番組に興じて恥じない国民になってしまったのかと、気持ちが沈む時がありませんか!
「イワシ1匹に米3合」と「モッタイナイ(MOTTAINAI」をもう一度、考えてみましょう。
理事長 富吉賢太郎