清和の窓から
No.85 人は必ず変わることができる!
「先生、お元気ですか。私はまじめに元気にしています。昔と今の私、ずいぶん変わったと思います。性格も言葉遣いも、洋服の趣味も変わりました。タバコもやめられました。こんなにも自分が変われるものかと驚くほどです」
犯罪、非行に手を染め、家庭裁判所から保護処分を受け、「筑紫少女苑」で教育を受けた後、仮退院した少女から届いた手紙である。博多湾を望む静かな松林の中にある九州唯一の女子矯正施設。14歳から20歳未満の少女たちがここで社会復帰のための教育を受けている。以前、ここを訪問したことがある。
親や先生に反抗、非行の限りをつくした少女たちは、入所した翌日から毎朝六時半起床が決まりである。まだあどけなさが残る子たち。「生活が荒れだしたのは中一の夏休みぐらいから。暴力団とつきあっていたこともあります」という言葉に正直、驚いた。万引き、恐喝、傷害、薬物使用…。
この子たちは何が原因で非行に走ったのか。いろいろ話を聞きながら思ったのは「がまんを知らない子たち」。とにかく、親や先生の言うことが素直に聞けない。勉強もスポーツも仕事も、ちょっとしたことで投げ出してしまう。周囲に配慮したり、協調して行動するという基本的な人としてのマナーを身につけることなく15,16,17と・・・。
例えば「待つ」ことができない。順番を待つ、じっと座っている、人の話を静かに聞く―といったことができない。そうすることに苦痛を感じ、感情のまま行動してしまう。そして「親が悪い」「先生が嫌いだ」と、人のせいにして非行を繰り返す。そのうち心さえ壊れていく。
だから、ここでは、まず、規則正しい生活を一から教えられる。今までのように寝たいだけ寝て、起きたいときに起き、食べたいときに食べるといったことは許されない。朝起きて、掃除、洗たく、朝食、後片付け、朝礼…。毎日、同じことの繰り返し。しかし、その規則正しい生活が、最初の手紙にあるように、いつしか少女の性格も、言葉遣いも、洋服の趣味さえも変えたのだ。
誰が見ても、まゆをひそめてしまうような服装、姿形。自由気ままの荒れた生活をしていたころは、それがまったくおかしいとは思わなかったから、好きにそうしていたのだが、少女苑での規則正しい生活の中で「洋服の趣味も変わった」と言うのである。
寒い朝、起きたくない、寝ていたい。学校行きたくない。自由気ままの方が誰だっていい、そうしたいと思う。しかし、社会に共存できる人間になるためには、自由とか個性とか言う前に、すこし、きついこと、不自由なこともがまん、こらえて、時には受け入れることが必要なのだ。最初の短い手紙の中に、「人は変わることができるんだ!」という〝真実〟が読みとれるような気がしませんか。
早寝、早起き、朝ご飯・・・規則正しい日常の大切さです。
理事長 富吉賢太郎