本のある風景

2019.05.14

No.4 鎌田實「本当の自分に出会う旅」

長野の諏訪中央病院名誉院長鎌田實さんの『本当の自分に出会う旅』(集英社文庫)。世の中にはやさしいお医者さん、いくらもいるだろうが、その中でも鎌田さんは特別やさしいお医者さんで、住民とともにつくるやさしい医療を実践している“ひげのお医者さん”だ。

◆時々、佐賀に来て、佐賀の人たちに健康を伝授してくれている鎌田さんは「旅は人生の栄養剤。人類のDNAの中には“旅をしたい”という思いが刷り込まれているはずだ」と言う。

◆今から500万年以上も前、アフリカのサバンナに現れた私たちの祖先は、まず食べものを求めて旅をした。その旅はアフリカ大陸からユーラシア大陸へと次第に広がった。生きるための旅から、未知なる所へ行ってみたいという好奇心を満たすための旅をする者も出てきて、大陸だけの移動だけではなく、ついには海を渡った。新しい世界で種をまいて、そして人類は進化をして人間になっていったのだ。

◆だから鎌田さんは「病気であっても、障がいがあっても旅をあきらめないで」と言うのである。新刊『本当の自分に-』には末期がんの女性やダウン症の青年ら、鎌田さんと旅をした多くの人たちの極上のエピソードがちりばめられている。

◆鎌田さんの言葉をもう一つ。「人の命は三つのつながりで守られている。“人と人”“人と自然”“体と心”の三つである」。その一つ“人と自然”のつながりこそが旅である。

理事長 富吉賢太郎

2019.05.14

 


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