理事長コラム

2020.10.20

No.33  読書の秋

よくぞ、この季節に「読書週間」(文化の日の前後2週間)をつくったものだ。読書週間は戦後間もない1947年、「読書の力によって平和な文化国家を」という決意で創設された。ということで、読書の話を・・・。

作家の井上ひさしさんは11歳のとき、初めて東京の出版社に本を注文したそうだ。山形の田舎町に住み、新聞の片隅に出ていた書籍広告が目に止まったからだ。それは宮澤賢治の『どんぐりと山猫』。

井上少年は小遣いをためたお金で為替を組み、「送ってください」と手紙を書いた。次の日から毎日、届いていないかと郵便局へ。次の日も、次の日も。二週間目にやっと届いたときは「飛び上がるほどうれしかった」と後に語っている。

ネットで注文すれば、あっという間に届く今では考えられない苦労話だが、井上さんの蔵書はすごくて、実に13万冊。膨大な本のために家が壊れたという凄いエピソードを持つ井上さん。故郷には、寄贈された蔵書で図書館ができた。

そんな井上さんの「井上流本の読み方十カ条」の一つに「本はゆっくり読むと、速く読める」と言うのがある。なんで!?と思ってしまいますが、小説でも専門書でも最初は丁寧に読んでいく。そして登場人物の名前、関係などをしっかり頭に入れておくと、自然に速くなるというわけだ。参考になりますね。

どんな時代になろうとも「本は絶対になくならない」と断言していた井上さんは「言語は人間に与えられた最上の贈り物。その媒介物で本にまさる物はない」と言っていた。今月27日から「読書週間」が始まります。さあ、図書室へ行こう。本棚の本を手に取ろう。

理事長 富吉賢太郎

2020.10.20

 


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