本のある風景

2021.07.31

No.42 「すごい自然図鑑」(監修・石田秀輝)

持続可能な社会と地球環境を考えたものづくりを提唱されている東北大学名誉教授の石田秀輝先生が、11月に予定されている鍋島直正公の没後150年記念シンポジウムで佐賀に来られると聞いてうれしくなりました。

その石田先生が監修された「すごい自然図鑑」。この本にはタイトル通り、私たちがいつも触れている昆虫や動物、鳥や魚、そして気象など自然の中のすごい仕組みが分かりやすく、やさしく説かれていて、驚いてしまいます。

例えば、嫌な蚊。刺されるとかゆくてたまらないが、刺された瞬間の痛みはあまり感じないことが多い。かゆくなるのは私たちの体が、蚊の唾液に反応したからで、刺された痛みではないそうです。刺されても痛くないのは、なぜか!その秘密は蚊の口の構造にあるそうです。そしてそれは、痛くない注射の針の開発につながっているというから驚きです。

カタツムリの殻はなぜ汚れないか。それはカタツムリの殻に理由があるそうで、殻を拡大して見ると、いくつもの小さな溝があり、カタツムリの殻がいつも湿って見えるのは、その溝に水がついて、薄い水の膜が出来ているため、この膜のおかげで汚れても雨が降れば汚れが落ちて、いつもきれいにしている。この原理を応用して、汚れない家の外壁用タイルが出来たのです。

クモの糸。巣網を張るクモも、張らないクモもすべて、尻から糸を出しますが、巣網を作るクモは7種類の糸を使い分け、鋼鉄より強い糸も作れるそうです。また、トンボや鳥、飛行機が空を飛べるのは、空中に浮く力が働くからだそうですが、この力は風が弱いと小さくなり、飛ぶのが難しくなります。しかし、トンボは風が強かろうと、弱かろうと空中に静止したり、真後ろにターンしたり、自由自在に風をとらえて飛ぶことができます。それはトンボのギザギザの羽が揚力を生むからだそうです。こんなトンボの羽の原理から微風でも動く、騒音も震動も減らした風力発電装置の大きなヒントになったようです。

とにかく自然はすごい。奇跡のテクノロジーがいっぱいで驚くばかり。石田先生が言われる「人類に必要な知恵はすべて、まさしく〝持続可能な社会〟を実現している自然の中にある」ということを実感できる図鑑です。夏休み、身近な自然を見つめるチャンスです!

理事長 富吉賢太郎

2021.07.31

 


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