本のある風景
No.56 『一秒の世界』(ダイヤモンド社)
本棚を整理していたら出てきた1冊。ちょうど20年前に出版されたものだから、世界の現状は大きく変わっていると思いますが、その変化を調べるのも勉強です。Think the Earth Project!
「1秒の世界」。分かりやすく言えば、「あっ!」という間に世界でどんなことが起きているかを教えてくれる。この本を開くと、思わず「えっ!」というようなデータがびっしり並んでいます。例えば今(20年前)、地球上で8億人が飢餓に苦しみ、毎日2万4000人が餓死している。時計の秒針が一回りする間に17人が飢え死にしているらしい。日本ではとても信じられない数字です。
食糧となる農産物や畜産物を生産するのにどのくらいの水が必要か―という「仮想水」。米1㌔で3600㍑、牛肉1㌔では2万㍑。その計算で1年間に日本が輸入している農・畜産物をすべて国内で生産するとしたら、国内総水資源使用量の三分の二に相当する640億立方㍍の水が必要となるというのである。
一方で、きれいな水が飲めないで毎年15億人の子どもたちが病気になり、うち300万人以上が死亡している。世界の水不足は他人事ではなく、こんな現状を知れば、食卓の食べ残しは罪深いことだと分かってくる。地球の砂漠化も深刻で毎年6万平方キロ、一秒間に1900平方㍍の緑が消え、1秒間にテニスコート20面分5100平方㍍の天然林も消失している。
今、あなたの上の空は晴れていても、世界のどこかで雨は降っている。1秒間に降る雨の量420万トンは25メートルプール1万800杯分にあたる。しかし、水資源が枯渇すると農業が成り立たなくなり、大量の農産物を持続的に生産することが不可能になってしまうのだ。
先日、国連事務総長が「地球温暖化と言うより、もはや地球沸騰の時代に」と警鐘を鳴らしていたが、刻々と世界が変わっているのは間違いない。そして、データで見る世界の現状は、私たち一人ひとりすべての営みと行動につながっているのだが、それを生活の中で実感している人はどのくらいいるだろう。
私たちは、まず豊かさの“正体”を知り、それを自覚することが大事なのです。そして、この本で示されるデータが今、どう変わっているのか、調べてみてほしい。この20年間で、さらに悪化しているのもあるだろうし、改善されているものがあるかも知れません。調べるのはみんなが持っている便利なタブレットで。パソコンは調べ学習最適のツールです。
理事長 富吉賢太郎