本のある風景

2019.08.30

No.12 松谷みよ子・著「私のいもうと」

「友達できるかな」。弾むような気持ちで転校していった小学4年の女の子。でも、そこで待っていたのは恐ろしいいじめだった。

◆「くさい」「ぶた」「クラスの恥さらし」とののしられ、誰も口をきいてくれない。遠足でも独りぼっち。とうとう学校にも行けなくなり、家に閉じこもって1年、2年…。「わたしのこと、みんなわすれてしまったのでしょうね」と書き残して死んでしまう。

◆その女の子の姉から届いた「私の妹の話を聞いてください」という一通の手紙をもとに作家松谷みよ子さんが涙をこらえこらえ書き上げた『わたしのいもうと』(偕成社)。何度読んでも込み上げるものを抑えきれない悲しい話である

◆以前、この童話を「これは本当にあった話です」と紹介したとき、「どうして本当にあった話だと言えるんですか?」という匿名の電話に戸惑ったことがある。松谷さんが手紙の中に“真実”を感じ取って書き上げたものを疑うなど思いもよらないことだったからである。たとえそれが創作であったとしても大切なのはその物語から“真実”をくみとることではないか。

◆群馬県桐生市で自殺した小学6年の女の子の事件が『わたしのいもうと』とダブってくる。この女の子は4年生で転校。そこで「臭い、あっちに行け」などと毎日のけ者扱いだったらしい。孤独感はつらい。いじめの有る無しとか、自殺との因果関係とか、話はそうなってしまうが、大事なのは『わたしのいもうと』の“真実”をくみとれるかどうか。

◆「これが本当だとどうして言えるんですか」などと言っているようでは、いじめは根絶できない。女の子が描き残した「やっぱり友達っていいな!」という漫画の中に“真実”を見いだせるか、これが大事である。

理事長 富吉賢太郎

2019.08.30

 


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