清和の窓から
理事長コラム「清和の窓から」101 相互扶助 助け合いの法則
相互扶助 助け合いの法則
国民スポーツの祭典「SAGA2024国スポ・全障スポ」は大変盛り上がりましたね。全国から集まった選手たちの頑張りはもちろんですが、大会成功の一つは競技・運営の裏方を率先して引き受けた「サガンティア」と呼ばれるボランティアの人たちです。山口知事から聞いたのですが、県が人数制限なく募集した「サガンティア」、実は応募した男性、女性が全く同数だったと知って驚きました。全国から佐賀に来る選手や関係者が気持ちよく大会に臨めるように、会場の清掃や道案内、後片付けなど裏方に徹して手助けを-と応募した人たち。年齢も家族構成も、生活環境もそれぞれ違う人たちだが、数えたら男女同数だった。それは偶然だ、と言ってしまえばそれまでですが、人間には説明できない〝不思議なチカラ〟があるような気がしてきて、こんなことを思い出しました。
中国の思想家荘子は「男は山であり、女は谷間である」と言ったそうですが、そのことについて、ノーベル物理学賞の故朝永振一郎博士(1906―79年)が実に面白いことを説いているのです。
「荘子が言うように、まったくその通りだと思う。山は水をたくわえるが、その水を目に見える流れに変えるのは谷間である」(『朝永振一郎 人とことば』共立出版)。科学の天才とは思えないような情緒的な表現なのだが、その表現を具体的に補強する朝永博士の「男女五分五分論」が実に明快である。
朝永博士は研究室に通うある女性から「男女協力の最も効果的な方法にはどんなものがあるでしょうか?」と聞かれた。今でいう男女共同参画について博士の見解を尋ねたのです。すると、博士は「山高ければ谷深し。さて、男と女の相乗作用効果のマキシマム(最大値)はどのような場合に起こり得るか…」と言いながらチョークを取って、目の前の黒板に0×10=0 1×9=9 2×8=16 3×7=21 4×6=24 5×5=25という数式を書き、「男女五分五分の力を掛け合わせれば、そのマキシマムが得られる。男女協力の相乗作用は単独作用の最大値の和「10+10=20」よりずっと大きくなる」
要するに、足し算より掛け算。片方が全力投球しても相手がまったく協力しなければ、その効果はゼロ(10×0=0)である。だが、互いに余裕を持って五分の力を掛け合わせればいい。無理のない理解と助け合い。実に分かりやすい相互扶助、助け合いの法則である。科学者らしい寸分の狂いもない分析力と観察力。加えて心豊かな人間味と知的なユーモア。常に科学と人間の共存を追求してきた偉大な博士に脱帽ですが、この助け合いの法則は、男女のみならず、家庭でも学校でも応用実践できると思いませんか。親と子、先生と生徒、先輩と後輩、友達同士・・・どんな組み合わせも考えられそうです。
理事長 富吉賢太郎