清和の窓から
理事長コラム 「清和の窓から」111
創立記念日の誓い!
毎年4月25日は佐賀清和学園の創立記念日です。清和は明治44年(1911年)の創立から今年で114年になります。創立記念日は私学ならではの式典だと思いますが、この日は創立者内田清一さんに思いをよせて、清和で学ぶすべての生徒 そして先生も一緒に、それぞれが新たな決意を胸にする日だと思っております。
私はいつも、自分に対してもそうですが、人が自信を持って困難に挫けず頑張ることが出来るのは、まずは、自分の生まれた所や自分が勉強した学校、勉強している学校、やっている仕事・職業に誇りを持つことだと思っています。その誇り無くして自信は生まれないと思います。
そういうことで、今日は、最初に宮沢賢治の「永訣の朝」を紹介したいと思います。原文でしようと思いましたが、とてもなまりがが強くて、難しく、普通では理解しにくいので、わかりやすい現代語訳がありましたので、それを朗読します。本当は放送部の誰かにしてもらったら、最高ですが、今日は私の声で勘弁してください。
それでは・・・宮沢賢治が結核に苦しんだ最愛の妹トシ子との別れの朝に書いた詩です。
「永訣の朝(あさ)」 宮沢賢治
今日のうちに 遠くへ行ってしまう私の妹よ
みぞれが降って 表は変に明るいのだ
(雨雪を取ってきてください、賢治や)
薄赤く、一層暗くて むごたらしい雲から
みぞれは ビチョビチョと降ってくる
(雨雪を取ってきてください、賢治や)
青い蓴菜(じゅんさい)の模様のついた 二つの 欠けた陶器の椀に
お前が食べる雨雪を取ろうとして
私は曲がった鉄砲玉のように この暗い みぞれの中に飛びだした
蒼鉛色の暗い雲から みぞれは ビチョビチョと 沈んでくる
ああ、とし子 死ぬという今頃になって
私を一生明るくするために こんなさっぱりした雪の一椀を
お前は 私に頼んだのだ
ありがとう、私のけなげな妹よ 私も真っすぐに進んでいくから
激しい熱や、喘ぎの間から お前は私に頼んだのだ
銀河や太陽、大気圏などと呼ばれた世界の空から落ちた雪の最後の一椀を・・・
(以下省略)興味のある人はネットで探して読んでください。さて、人間の本当の自信はどこから生まれるのか。偉大な数学者藤原正彦さんは、「・・・その源泉は自分の国の文化や伝統への誇りである」と言われます。「自分の生まれた国に対する誇りなくして 世界に出た時、真の自信は生まれません」とも・・・。
藤原さんは、なぜ、そう思うのか。思うようになったのか。毎日、数学の勉強に明け暮れた大学を卒業して研究者になった藤原さん。苦しい研究者生活を支えてくれたのは猛勉強した数学とは違って中学や高校時代に読んだ小説や詩の方が大きかったそうです。中でも宮沢賢治の作品は特にエネルギーをもらえたそうで、「こんな文学作品、詩が書ける人がいる日本に生まれたことそのものが誇りだ。この誇りが自分の力になっている」と言われます。
いかがでしょうか。皆さんも、それこそ縁あって清和に入学したこと、そして清和に来ていなかったら一生出会わなかったかもしれない友達や先生と出会った奇跡を誇りに思って、それを力にしてほしいのです。そして、今日の創立記念日に何か一つでも自分らしい決意を誓ってほしいと願っています。
理事長 富吉賢太郎