清和の窓から
理事長コラム「清和の窓から」124
県鳥・カチガラス(カササギ)
今年は秋から東北地方を中心に全国でクマの出没騒動が相次ぎ、年末恒例の今年の漢字一字は「熊」となりましたね。さすがに佐賀にはクマはいないので、クマと違って、佐賀でも迷惑なカラスの話をしましょう。
鳥の中でカラスほど賢い身近な鳥はいないと言われます。「カラスはどれほど賢いか!」という本もあるようですが、とにかく好奇心が強く、その行動は大胆にして細心。だが、ひとたび悪事に走ると手口は巧妙で目に余る。熟した果実を収穫寸前に失敬するのは朝飯前。犬や猫などのペットを攻撃したり、ヒチコックの映画さながら、追っ払ったりして怒らすと、時には人を襲うことも・・・。
頭痛の種はごみ収集場での行儀の悪さ。ごみ袋を食い破り、足の踏み場もないほど食い散らかしてしまう。カラスと人間の熾烈な知恵比べ。わが家の庭や畑でも、せっかく熟した柿やザクロ、ミカンが突かれたり、野菜を食い荒らされたり被害甚大で、この憎きカラスを追っ払いたい気持ちになりました。
でも、同じカラスの仲間でもカササギは、ちょっと違いますね。特に佐賀のカササギは「カチガラス」の愛称で親しまれ、1965年には県鳥に指定されています。しかも佐賀平野に生息するカササギは特別に1923年、国の天然記念物に指定されていること、知っていましたか。
カササギは、あの大きくて、ふてぶてしい真っ黒のハシブトカラスと違って、スマートな長い尾に白と黒のコントラストが美しく、数多くの民話にも登場するほど人に親しまれた鳥なのです。その分布は国内各地で生息はしていますが、特に佐賀、福岡、長崎、熊本など九州北部一円が中心となっているようです。
しかし、そのカチガラス、最近は本当に目にすることが少なくなりました。滅多に見ることがない。縄張り争いで、あの憎きハシブトカラスに敗れたのか、それとも・・・。
もともとカササギの巣づくりは樹木の上が中心でした。しかし開発の波は容赦なく、営巣に適した里の木々は少なくなって、今は八割が電柱だという。何年か前、佐賀市内の県道沿いの電柱にあったカササギの巣が燃えだし、周辺の約三千戸が一時停電したこともありました。巣の材料に使っていた針金が原因だったそうです。巣作りの材料集めにも苦労しているのでしょうか。
文禄・慶長の役の際に佐賀藩・鍋島直茂が朝鮮半島から持ち帰ったと言い伝えられるカササギ。中国では「吉兆の鳥」とされ、七夕の夜、天の川に橋を渡すという伝説もある愛すべき鳥ですが、自然環境の変化の中で、如何ともしがたい現実です。人と自然の動物との共存の難しさを思うこのごろです。
理事長 富吉賢太郎