清和の窓から

2026.02.02

理事長コラム「清和の窓から」127  ”春はすぐそこに!”

春はすぐそこに!

 

春が待ち遠しいと思っていませんか。もう、すぐそこですよ!

と、言うことで、こんな話しはいかがでしょう。

ある時、といっても今から1300年以上ものお話です。天智天皇が内大臣の藤原鎌足を呼んでこう言ったそうです。「春山の万花の艶(におい)と秋山の千葉の彩(いろどり)、どちらが優れているか皆で話し合ってみよ!」。まさしく〝春秋の争い〟ですね。

〝春秋〟は古代中国の儒教経典にある言葉ですが、日本では、和歌をこよなく愛した平安貴族たちの間で、この春秋の競い合いがあったようですね。この時、真っ先に答えたのが万葉の女流歌人・額田王。額田王は、「春は花が咲き、鳥も鳴いて華やかだけど、私は紅葉の中でしみじみと思いにふける秋が好き―」と秋に軍配を上げたそうです。

今で言えば「春組」と「秋組」に分かれてのディベートみたいなものですが、豊かな四季を持つ日本ゆえの、ぜいたくな競い合いと言っていいですね。そうは言っても、四季が巡るのは決して日本だけのことではないようです。北半球の温帯地方であれば四季があるそうです。だが、俳句のように季語を詠み込むことを必須条件とする文芸形式を考え出すなど、四季を特別に尊ぶ日本人の国民性、これは誇っていいと思います。

立春とは言え、まだまだ寒い日が続いていますが、ちらほら校庭の梅花が咲き、やがて桜の開花があり、体感としての春、もうすぐそこです。

さて、季節感を尊ぶ俳句の世界で、うつらうつら心地よい「朝寝」や「春寝」「春の夢」が春の季語だというのはよく分かりますが、春の眠りを表す言葉に「蛙(かえる)の目借り時」というのがありました。眠くて眠くてたまらない春の夜のことを指すそうですが、「カエルは人間の目を借りて眠る」という奇妙な言い伝えに由来するらしいのです。調べて見たら、「理髪屋の椅子に回さるる目借り時」(福島湖亭)「水いとどうまし蛙の目借り時」(増田龍雨)という句を見つけました。面白いですね。

春夏秋冬。平安時代の〝春秋の争い〟では、どうも「秋」が優勢だったようですが、いやいや「春眠をむさぼりて悔いなかりけり」(久保田万太郎)なんかは、待ちに待った春の到来、目が覚めるような秀句だとは思いませんか!

 

理事長  富吉賢太郎


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