清和の窓から
No.59 一流アスリートたちの努力から学ぶもの
一流アスリートたちの努力から学ぶもの
今は人気スポーツジャーナリストとして活躍している増田明美さん。中学時代はテニス部と陸上部を掛け持ちするスポーツ大好き人間。中3の時、800㍍走で全国4位に入賞。この走りが高校陸上の強豪、千葉・成田高校の滝田詔生監督の目にとまりスカウトされたのが本格的な陸上競技との出会いである。
高校時代、陸上長距離種目で次々と日本記録を樹立。まさに天才少女といわれたその陸上人生、順風の時ばかりではなかった。高校1年のインターハイの後、ひどい貧血に悩まされ、一度は退部。気を取り直して部に戻ったが仲間との差にがく然。しかし、「いまに見ていろ」と奮起。悔しさをバネに猛練習に励んだ。
高校を卒業後、実業団に入り、本格的な陸上人生が始まったが、小柄な増田さんは世界と闘うには走行中の歩幅を1㍉でも広げたい。そのために毎日、どんなきつい練習の後でも腹筋3000回を日課としたという。
同じような話。ミュンヘンオリンピックの男子平泳ぎ100㍍金メダリスト田口信教さん。小柄な体で世界の猛者と互角に戦うにはスタートの飛び込みで0・2秒稼ぐしかないと、考えた秘策はスタートの前傾姿勢。スタート台の両サイドを親指以外の両手指8本で支え、体を可能な限り前へ突き出す。このため田口さんは中指と人差し指の4本の指だけで毎日、懸垂80回。また、フリークライミングからヒントを得て体育館の梁を、同じく4本の指だけで忍者のように往復して徹底的に鍛えたという。現役時代、田口さんの握力は成人男性のほぼ2倍、92㌔もあったという。
増田さんは、高校時代から競技引退までの13年間で日本最高記録12回、世界最高記録2回を更新した日本女子陸上界のスーパースターだったが、田口さんと同じく、世界と闘うために日本人アスリートが自らに課した努力を知っておくのも学びである。
スポーツに限らず、地道な努力は尊く、裏切ることはない。
理事長 富吉賢太郎