清和の窓から

2022.08.12

No.63 放送部の「こころをはこぶ」から学ぶもの

世の中には頭の下がるような感心な人がいる。この人もそうだ。佐賀市営バスの運転手・時盛二三男さん(68)。バスを運転しながら乗って来る人、降りる人に必ず語りかける挨拶、実に心がこもっている。黙って車内アナウンスを聞いていて、グッと胸に来るものがありました。

 

7月に東京・NHKホールで開かれた第69回NHK杯全国高校放送コンクール。そのラジオドキュメント部門で、この時盛さんの語りかけをテーマに作品を制作した佐賀清和高校放送部が見事に優勝。高校放送部活動の頂点、日本一の栄冠を手にしたニュースは、新聞やテレビで大きく報道されたように、作品の素晴らしさは審査通り、みんなが認めるところですが、私は、この心優しき運転手、時盛さんを取り上げようと思った放送部員の思いと発想に感動しました。仮に優勝を逃したとしても、「時盛さんをテーマに」と思いついたこと自体が実に素晴らしいことで、「清和の生徒には人のやさしさ、思いやりを見抜く、感じる心がある」と嬉しくなりました。

 

優勝作品には、ある月曜日の朝のアナウンスがそのまま収録されている。

「おはようございま~す。今日は月曜日ですね。休み明けで少々だるいかも知れませんが、今日一日、それなりにがんばってください。2日目、3日目と上り調子になっていくでしょうから、それなりにがばってくださ~い・・・」

 

佐賀駅から清和の校門前バス停までの約2キロ。時盛さんが運転するバスに乗った清和の子どもたちは、何ともいえないこんな車内アナウンスを聞きながら、「今日もがんばろう!」と元気をもらっているのだ。中には、「二三男さんの・・」と半端ない親近感でアナウンスを楽しんでいる生徒の姿もある。乗客インタビューに応えていたある男子高校生のコメントが最高だ。この生徒は、時盛さんのアナウンスを収録するほどの時盛ファン。何と将来はバスの運転手になろうかなと思うほど〝時盛愛〟がすごい。「どうして、バスの運転手に?」との問いかけに「ぼくはバスの運転手と言うか、時盛さんになりたいのです」。これは、もう最高ですね。

 

嬉しい放送部の日本一。同時に、繰り返しになりますが、この感心な時盛さんの優しさに気がついた放送部員に「よくぞ、時盛さんをテーマにしてくれた」と拍手を送りたい。そして、今回の作品から私たちが学ばなければいけないのは、そう、日常の挨拶、言葉かけの大切さです。

 

理事長      富吉賢太郎


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