清和の窓から

2023.09.19

No81 HumanRights(人権)

10月の学校行事予定に「人権・同和教育講演」がありましたので、今回は「人権」について考えてみましょう。

 

「いつかもんぺをはいてバスに乗ったら/隣座席の人は私をおばはんと呼んだ よそ行きの着物に羽織を着て汽車に乗ったら/人は私を奥さんと呼んだ どうやら人の値打ちは着物で決まるらしい」

これは、授業で習ったことがあると思いますが、「同和教育のお母ちゃん」と呼ばれ、90歳を過ぎても全国で差別の根絶を呼びかけていた江口いとさんの『人の値打ち』(明石ブックレット)の一節です。同和地区、被差別部落に生まれたというだけで、友達の誕生会にも呼ばれなかった孫のことなど一家三代にわたった差別体験を、そのまま淡々とつづった多くの詩は切なくもあるが、ハッと気づかされ、考えさせられます。

 

生前は佐賀でも講演されたことがある。かくしゃくとして同和問題の解決を語りかけた。結婚や就職、学校現場で家族に降りかかった容赦ない差別。その実体験に基づく江口さんの視線は鋭く、また温かいから人の心を打つのだ。

 

ややもすると“人の値打ち”というものが身なりや肩書、また学歴や生まれた所で決まってしまう、何とも説明しようのない理不尽な社会。あってはいけないが、どうしても先入観や偏見に左右されてしまう人の心の弱さをどう克服していけばいいのか。新時代を切り開くキーワードだと、誰もが口にはする「人権」。なのに、いじめや差別事件が後を絶たないのは、どうしてだろう。

 

同和問題に限らず、何げない一言が、癒やしようがないほど他人を傷つけてしまうということを知るには、繰り返し、繰り返しの学習が大切だと思います。あやまちに気付くのは学びしかありません。江口いとさんの『招かれなかったお誕生会』もいろんなことを教えてくれます。調べて、読んでみてください。

 

理事長 富吉賢太郎


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