清和の窓から

2019.05.14

No.4 世の中は不公平だと思え

演出家・浅利慶太さん(故人)は入団してきた若い練習生たちに必ずこう言ったそうだ。一つは「世の中は不平等だと思え」。もう一つは「自分だけの時計を持て」

◆世の中みんな平等で公平―ということは、とても大切でいいことだが、厳しい演劇の世界を生き抜くには、何でも「平等」「公平」では、役の割り当てなど、何かにおいて不満が出やすくなり、練習に身が入らない。義務を果たすことはさておいて、権利意識ばかりが前に出ることへの戒めだろう。

◆そして「自分だけの時計」とは、生き方の“モノサシ”、つまり自分らしい生き方をしなさいという教えだ。これは、「みんなしている」「みんな持っている」といった横並び意識から脱却できない人たちへの耳の痛いアドバイスである。

◆その浅利さんが主宰した劇団四季の「ライオンキング」を、ずいぶん前に見たことがある。それは感動の舞台だった。歌と踊り、動物たちの衣装、照明…。あっという間の3時間は、大人だけでなく子どもたちにとっても多くを学ぶことのできる舞台だった。

◆そして、感動したのは舞台だけじゃない。小さい子どもたちの客席マナーである。その静かさは驚くほど。自分だけの真っすぐな時計の秒針は日常のこんなところから出来てくる。「清和」の子どもたちは日々、そのことを学んでいる。

理事長 富吉賢太郎

2019.05.14

 


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