清和の窓から
No.88 オーストラリア・ホームステイ体験
私が新聞社にいた時、共同通信論説研究会の海外視察でいろんな国を見てきました。普通のレジャー旅行では滅多に行かない国などいろいろです。例えばベルリンの壁が崩壊した直後の東ドイツ。東西ドイツ統一の前です。やがて自分の国がなくなるかも知れない時の国の様子、国民の気持ち。仕事を無くした多くの国民が東西ドイツを隔てた巨大な「ベルリンの壁」にツルハシやハンマーを打ち込み、崩れた破片を道路に並べ売っていた姿は、あの時でしか見られない光景だったと思います。あの人たちを「壁キツツキ」と呼ぶ人たちがいました。
ロシア・モスクワの中心を流れるモスクワ川沿いにある旧ロシア帝国の宮殿「クレムリン」。今は、あのプーチン大統領がいるクレムリンの中にも入りました。ちょうどプーチン大統領が任期を終え(2008年)、メドベージェフ首相と入れ替わった時です(プーチン氏は首相だったメドベージェフ氏に1期だけ大統領の座を譲り、その後、大統領任期の法律を変え、再び大統領座に。現在まで政権を握っています)
クレムリンの中に入るときのチェックの厳しかったこと。空港検査所みたいでした。新大統領と通訳を通しての記者会見はクタクタになりました。帰りのモスクワ空港の手荷物検査で、「重量オーバー、(検査を)通して欲しいならカネを!」。公然と不正をする検査官。日本ではあり得ないことです。また、カナダ日本大使館で外交官たちの仕事ぶりをみたり、硬軟いろいろ体験しました。
帰国後は必ず報告の連載記事を書いてきましたが、先日、清和中3年生が体験した修学旅行「オーストラリア・ホームステイ」の報告、事後学習の冊子が届きました。参加者全員が、初めての海外旅行の感想をつぶさに書いています。全部、読みました。初めてのオーストラリアでの感動、驚き、喜び、戸惑い・・・手に取るように分かる素晴らしいレポートになっています。
海外旅行、誰でも最初の関門は言葉です。レポートを読みながら、その不安がどのように消えていったか、よく分かりました。そうですね、言葉は心、通じていくものなのです。この経験があれば、英語の学習が楽しくなり、「聞く」「話す」の能力アップにつながると信じています。
中学3年生にとって異国でのホームステイがいかに楽しく、有意義だったか。レポートの中で一番多く見つけた「フレンドリー」という言葉で分かりました。
知らない社会をその目で見る。体験は学びの大切な〝核〟だと信じています。
理事長 富吉賢太郎