清和の窓から
2019.09.27
No.14 C・W・ニコルさん
環境保護活動家C・W・ニコルさん(長野県)が先月、佐賀市で「森から未来を見る」というテーマで講演されました。今回は森の偉大な効能と森の保護を訴え続けているニコルさんの話を・・・。
詩人でもあったニコルさんの母親は「山や森はいろんなことを教えてくれるよ」と言うのが口癖で、ニコルさんがおなかの中にいるときからほとんど毎日、イギリス・ウェールズの山を歩いたという。出産する2週間前まで山を歩き、生まれてこようとする赤ちゃんに語りかけた。山の風がおなかの中の赤ちゃんを丈夫にしてくれると信じていたそうだ。
そんな母親に育てられたニコルさんも幼いころから山歩きを始めた。緑や紫に光る山。うっとりするほど美しい渓谷。一度、山に入ったらいつ帰ってくるか分からないような子だった。山頂に登っては遠くを見つめ、風に吹かれながら冒険と旅への夢を膨らませたという。
ニコルさんが長野の黒姫に定住したのは1980年。日本国籍も取得し、そこで荒れた森を購入。人間の都合に合わせて壊された生態系の復活を試みる作業をずっと続け、財団法人「C・W・ニコル アファンの森」を設立したのは2002年のことである。
あらゆる生き物の命をつないでいる大切な水を蓄えることができる森は「水の母親」である―と訴えるニコルさんの「アファンの森」では、親からの虐待で傷ついた子どもたちが〝森の力〟によって癒やされ、心を取り戻しているそうだ。
何年か前もニコルさんの話を聞いたことがあるが、その時、「(虐待を受けた)この子たちがこの森に来たころのことを思い出すのはつらい」と語りながら涙を流していた。ニコルさんの実践とメッセージは現代社会への警告だと思えてくる。
理事長 富吉賢太郎
2019.09.27