清和の窓から

2024.03.08

No.89 サムマニー・・・お金の話をしよう!

どこかの小学生が、友達から「カネもうけになるぞ」と、何十万円もだまされたという。小学生が〝投資詐欺〟とは驚きです。

人間が生きるのに必要なものが3つある。「勇気」と「想像力」と「サムマニー」。これは天才チャップリンが映画の中で語った台詞だそうですが、チャップリンは、人間はお金がないと生きていけないけど、そんなに多くはいらない、〝いくらかのおカネ(サムマニー)〟で良いと、希望をなくした踊り子に語りかけたのです。

ところが人間は、どうしても、もっともっとカネが欲しいと思ってしまう。だからカネにまつわる犯罪、問題が後を絶たないのでしょう。それが子どもにまで・・・。と、言うことで、お金の話をしましょう。

歌集『一握の砂』で知られる石川啄木は死ぬまで生活費に困窮。お金にまつわるエピソードには事欠かない。啄木は、ついに楽にならない自身の貧しさを「はたらけどはたらけど 猶わが生活楽にならざり ぢっと手を見る」と詠んだのです。結核を患い亡くなる二年前のことで、命日は明治45年4月13日。清和創立のちょうど1年後。花冷えのするその夜、妻節子がつけた金銭出納簿が何ともいえない。

親戚や文学仲間からの香典が全部で120円。その他、いくつも泣かせる数字が並んでいる。支出3円47銭の中に「さるまた15銭」。亡き夫に新しい下着を買ってはかせたのだろう。「お花2銭」「ろうそく10銭」。「もりそば20銭」は4銭のそばを5人前とって通夜をした。

支出の半分を超える1円80銭が電報料。一般家庭に電話などなかった時代、当時の電報料金は市内10銭、市外20銭だったそうで、夫の死を知らせるために10数通の電報を打ったことが推測される。この時代、庶民の暮らしぶりはどこも、つましいものだったに違いない。

啄木の時代からおよそ120年。日本は変貌した。想像もできなかったほどの豊かさを実現した。だが、世論調査などでは「幸福感」を実感できない人が増えているという。豊かさ目がけて走り続けているうちに、ものの価値判断の軸を「お金」にしてしまったからかも・・。「お金さえあれば…」と思い続ける中で、人間同士の絆や、分け合う気持ちなど、大切なものをどこかに置き忘れてきたのかもしれない。

もうすぐ4月。新学期を前に、家族でお金のこと話したら、何かとても大切なものが見えてくるかもしれません。

理事長 富吉賢太郎


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