清和の窓から
2021.02.04
No.37 春よ、来い! フキノトウ
裏庭の枯れ草の中からフキノトウが顔をのぞかせている。北国では雪解けを待たずに顔を出す“春の使者”だが、雪のない南国でも春は待ち遠しい。
キク科フキ属の多年草で、目にやさしい淡い緑がいい。「春の皿に苦味を盛れ」という言葉があるように独特の香りと苦味が味覚を刺激する。見てよし食してよし。「庭下駄や春そこここに蕗の薹」(小杉余子)
もう亡くなったが、佐賀市出身の詩人江口季好さんも編集に携わった「詩だいすき」(日本作文の会編)の中に、感動的なフキノトウの詩を見つけた。学年は分からないが福島県いわき市の小学生の作品。自由な表現、情感と真実性。もえ出るような生活感覚に目がくぎ付けになった。
「先生のたんじょう日なので ふきのとうをとりにいった。ふきのとうのあるとこはたんぼだ。ふきの10(とお)だから10こにしようとしたけど、いっぱいあったから10こよりいっぱいとった。“先生のためならがんばるぞ”とうたいながら いっぱいとった」
先生の誕生日にフキノトウを採りにいった女の子。両手からこぼれるほどいっぱい摘んで、大好きな先生のところに持っていったのだろう。「先生、誕生日おめでとう」と言って。りんごのような赤いほおが目に浮かんでくる。
「先生のためならがんばるぞ」が実にいい。春よ来い!
理事長 富吉賢太郎
2021.02.04