清和の窓から
理事長コラム「清和の窓から」116 人間、一生勉強!
人間、一生勉強!
私事ですが、新聞社にいたころ、いろんな人たちからいっぱい手紙をもらいました。手紙の中身は記事に対する意見、感想、近況報告などなど・・・。そんな手紙の中に、「愛読者からのお願い」という封書が届いたことがある。差出人はみやき町にお住まいの人で、今でも机の引き出しの中にあります。
その手紙の書き出しに、「老眼・乱視・白内障初期。1年前に脳こうそくで在宅リハビリ 99歳老男子からのお願いです」とあったので、年齢からは想像できないユーモアに感動した記憶が残っています。
さて、その〝今年白寿のおじいさん〟からのお願いとは何だと思いますか!
明治時代に日本人によって書かれた日本人論について、私のコラムに取り上げた内村鑑三著『代表的日本人』の一部英語表記への注文、お願いだったのです。99歳の老人が英語の新聞表記について、ということで、これまたびっくりでした。
その人が言うには、「英語は1語1語で読み取るから、本来横書きの英語が新聞ではアルファベット1文字1文字の縦書きになっているから分かりづらい」という。つまり、英語表記のローマ字abcは縦書きの新聞でも横書きのabcにした方が読者には親切では-という意見でした。「読者には親切では…」という謙虚で的を射た指摘に脱帽。世の中には、年齢とか関係なく、こんな勉強家がいるんだということを知りました。
その人は1933(昭和8)年、旧制中学に入学した時、初めて英語に触れ、49歳から独自で英会話を始めたという。そして、80歳を超えてジャパンタイムズ主催の「英語暗唱コンテスト」(文科省など後援)に挑戦。415人が参加した大学一般の部で全国1位になった実力の持ち主だったのです。
あまりの感動で直接、声を聞きたかったので、手紙にある電話番号に電話を入れ、「99歳で毎日、新聞を読んでおられるのに驚いています」とお礼を言ったら「えっ、どうして? 新聞は読むものでしょう(笑い)。当たり前のことですよ」と返されて、「すごい!」と言うしかなかったのです。こんな前向きな人に会うと、こっちもうれしくなりますね。白寿のおじいちゃんの手紙と、その生き方から学んだこと、それは「人間、一生勉強!」でした。
もうすぐ楽しい夏休みですね。夏休みは多いに楽しむべし!。これは若者の特権です。そして、楽しみの中に、ぜひとも〝勉強〟もいれておいてほしいですね。これもまた、若者の特権です。
理事長 富吉賢太郎