清和の窓から
No.45 戦争と平和を考える
外はセミ時雨。8月6日は「ヒロシマ」、9日は「ナガサキ」、そして15日は「終戦の日」。8月は〝戦争と平和〟を考える月だと思います。戦後76年。72歳の私も戦争というものを知らないが、しかし、戦争を知っている人も、戦争を知らない人も、8月は平和の尊さを思うことにしたいですね。
76年前の8月15日。日本国民は号泣した。高村光太郎(1883―1956年)は、この日にしたためた詩「一億の号泣」を岩手日報に寄せた。玉音放送を聞いたのは岩手・花巻の鳥谷崎神社。「社務所の畳に両手をつきて 五体わななきて、とどめあへず(中略)我等が未来の文化こそ 必ずこの号泣を母胎としてその形相をはらまん」。戦争への反省と日本の再起を願い、不戦を誓う涙であったろう。とても難解な文章ですが、これも勉強です。
「victim(被害者、犠牲者)」「suffere(受難者、苦しむ人)」「survivor(生き残った人)」。1977年7月、国連の働きかけで米、英、ソ連(当時)など世界14カ国、46人の研究者らが初めて広島、長崎の原爆被害を現地調査。その後、広島でシンポジウムが開かれた。テーマは「原爆被害」。原爆投下を風化させてはいけないという催しだったが、その時、「被爆者」をどう英訳したらいいものか…。参加者から出たのが冒頭の単語であったという。
この英単語で分かるように、被爆者の苦しみは、とても他に比較できるものではない。熱線によるやけどの痛み、残ったケロイドのひどさも含めて被害や受難といった言葉では言い尽くせないのです。その時、米国の平和運動家バーバラ・レイノルズ氏が「そのまま“hibakusha(ヒバクシャ)”がいい」と。「ヒバクシャ」が国際語となった瞬間です。
生命の尊さ、戦争の醜さ、核兵器の恐ろしさ…。唯一の被爆国・日本だからこそ世界に訴えられることを知っておこう。ノーベル平和賞受賞者、ケニアのワンガリ・マータイさんが言った「モッタイナイ(mottainai)を国際語にしましょう!」と、どこか似ていますが、勉強はいろんなことを知ることから始まると思います。
理事長 富吉賢太郎
2021.08.10