本のある風景
2019.09.12
No.13 坂本博之・著「俺は運命を信じない」
プロボクサーにとって“死の宣告”に等しい病気、椎間板(ついかんばん)ヘルニアを克服して再びリングに立った元日本ライト級チャンピオン坂本博之さんが書いた「俺は運命を信じない」
◆奇跡のカムバックの裏にあった西村達也君(佐賀市)との出会い。西村君は中1の時、体育の跳び箱で転倒。社会復帰確率4%という障害を背負い、飯塚市の「総合せき損センター」へ。そこに失意の坂本さんもいた。懸命にリハビリに励む西村君。その姿に心打たれた坂本さんは「タッちゃん、俺、必ずリングに立つからな」と約束、再起を果たした。西村君は車いす生活で熊大工学部を卒業。今は立派な社会人に。
◆そんな坂本さん。児童養護施設の子どもたちのため自らの資金で「こころの青空基金」を設け、東京・荒川にボクシングジムを開設。今でも養護施設の訪問を続け、励まし続けている。
◆弟とふたり、福岡の児童養護施設「和白青松園」で育った坂本さんは幼いころ虐待を経験している。両親の離婚のため親類の家に預けられたが食事も満足に与えられなかった。水道代がもったいないとトイレにも行かせてもらえず、公園の便所にかけこんだ
◆そんな仕打ちに歯向かうと顔が変形するほど殴られた。学校の給食と、川のザリガニやタニシで飢えをしのいだ。そして施設に。そこでやっと平穏な暮らしを手にした。だから、訳あって施設で暮らす子どもたちの気持ちが分かるのだ。
◆「人間は運や運命に左右されるものではない。どんな環境で育とうとも胸を張って生きていけば必ず夢をつかむことができる」。自身の境遇を隠したり恥じたりせずに逆境を乗り越えてきた坂本さんの言葉を多くの人に…。
理事長 富吉賢太郎
2019.09.12