本のある風景

2023.02.06

No.52 読書と、本を読まない生活習慣病!

毎月、仲良し図書部員が届けてくれる佐賀清和高校図書部の「図書館だより」。最新号を見ていたら「図書室がピンチです!!!」という見出しに驚いた。「全校生徒に対するタブレットの普及に伴い、図書室の本の貸し出し冊数が大幅に減少しています。毎月、新しい本が入っているので借りに来てください」とあるではないか。と言うことで、読書の話しを。

 

先日、「家読(うちどく)の里として全国に知られる伊万里市に行ってきました。「家読」とは親子が家庭の中で本を読みましょうという運動ですが、20年ぐらい前から、この家読運動にふれて、伊万里でいろんな人たちとの出会いがありました。以前にも紹介した作家の柳田邦男さんもそうですし、元通産官僚で今は早稲田大教授、元鳥取県知事でもあった片山善博さんもその一人です。

 

生きて行く上で、自分の考えをきちんと相手に伝えることができるかどうか、これはとても大切なことですが、片山さんは「その基本は読書である」と言い、自分を大の本好き人間にしてくれた両親に感謝している―といつも言われていました。

片山さんの本に関する素敵なエピソード。片山さんによると、ご両親はよく本を買ってくれたが、いつも二つ年上の兄と取り合いに。当然、力では負けたが学校から帰るのは兄よりも早かったから、それこそ“鬼”のいない間に一気に読んだ。遅れて帰った兄が宿題を済ましたあと、本を手にした横で、片山さんは、わざと大きな声であらすじばらしてけんかの仕返しをした―という。

片山さんは、こうやって速読、多読の技が身に付き、読書が生活習慣となったそうだ。しかし、片山さんに言わせると、「最近は大人も子どもも本を読まないという生活習慣病にかかっている者が多い。生活習慣病はじわーっと体を蝕(むしば)み、後で取り返しのつかないことになる」

片山さんは6人の子どもたちにも自ら読み聞かせを実践したそうだ。『はらぺこあおむし』『ノンタン』『百万回生きたネコ』など毎日読んで寝かしつけた子どもたちも物心つくころには、いつも本を手にする生活習慣が身に付いたらしい。

これから大人になっていく中高生たちが、人間らしさと言いますか、しっかりものを考える力を身に付ける人間になることを後押ししてくれる身近な所、それは面白い本がいっぱいある学校図書館だと思いませんか!。

 

理事長 富吉賢太郎


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