本のある風景

2019.07.19

No.9 田村隆一・訳「ゼラルダと人食い鬼」

国際アンデルセン賞受賞のフランスの絵本作家トミー・ウンゲラー作『ゼラルダと人食い鬼』。詩人の田村隆一さんの訳で日本の子どもたちにも人気の絵本。
「昔むかし、あるところに、ひとりぼっちの人食い鬼がいました」。人間の子どもを捕まえては食べてしまうという残酷な〝人食い鬼〟。幼い子どもには恐ろしくて震えるような話の始まりだが、実はハッピーエンドの物語

あらすじを少し…。子どもを食べられては大変だと、町の大人たちは子どもたちを地下に隠して守るのだが、町から遠く離れた村に暮らす人たちは人食い鬼のことなど何も知らない。ある日、村のかわいい娘ゼラルダは一人で町までお使いに。だが、怖い鬼に見つかってしまう。

ゼラルダを見た人食い鬼は「久しぶりのごちそうだ」。しかし、人食い鬼はあまりの空腹に力もない。倒れそうな鬼を見たゼラルダは「腹ぺこなのね」と得意の料理を作ってやる。スープや酢キャベツ。キノコのゼリーに果物の砂糖漬け…。初めて食べる料理の数々。人食い鬼はすっかり子どもを食べることなど忘れてしまい、それからは子どもを襲うこともなくなり町に平和が戻るのだった。

恐ろしい人食い鬼が、料理上手で心優しいゼラルダと出会い、みるみる間に穏やかになり、町の人たちと仲良く暮らす―というこの物語。実は食育教材の視点からみても面白い。心のこもった料理が野蛮な鬼の性格も、言葉遣いも、趣味さえも変えてしまったのだ。

人間とて同じこと。規則正しい食生活が性格や言葉遣いなど、人の心根を軌道修正してくれるかもしれない。

理事長 富吉賢太郎

2019.07.19

 


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