清和の窓から

2023.01.01

No.71 年の初めに「異聞 ウサギとカメの話」

新年、明けましておめでとうございます。今年の干支は「兎(うさぎ)」ですね。今年1年が皆さんにとって充実した1年になりますように-との願いをこめながら、かわいいウサギにまつわる話を少しだけ・・・。

 

中学のころ、年明け早々の教室で、担任の先生から〝異聞 ウサギとカメ〟を説かれた記憶がある。先生曰く、「今からでも遅くはない。カメの如く、あきらめずに、とにかくこつこつ努力しておけば、必ず報われる。油断大敵だぞ!」。先生から高校受験を控えた中学生への激励にしては、当たり前すぎて拍子抜けするような、ご存じ、「ウサギとカメ」の話である。今さら子どもでもあるまいしとは思ったが、実は先生の話は驚きの展開となった。

歩みののろいカメと、素早い走りのウサギのかけっこ競走。ゲームの前に勝負はついているようなものだが、ところがどっこい、余裕かましたウサギは一休み。たゆまず歩み続けたカメが勝つのである。以来、事あるごとに、ウサギは油断大敵の見本にされ、努力家カメへの共感というか、日本人の好きな教訓となって、今でも語りつがれている。ひたすら技や芸を磨き、この道一筋の人たちが晴れの栄誉を受ける褒章や叙勲など、その賛美にもこの流れがあるようです。確かに大事な、大切にしたい教えの一つですが、先生の話には続きがあった。

実は、この「ウサギとカメ」の話をインドの人に教えた人がいたそうだ。果たしてインドの人の感想やいかに。インドの人は「(休んでいるウサギさんを追い抜くとき)カメさんは“もしもしウサギさん、どうしました?”と声をかけてやるべきではなかったか」と。つまり、ひょっとしたらウサギは余裕で休んでいたのではなく、もしかしたら気分が悪くなって休んでいたかもしれない。声をかけていたら、昼寝か、病気かがわかる。自分が勝つことしか頭になかったカメさんはいじわるではないか、というのである。

これは思いもしない感想ですが、あの時の先生の教えは、コツコツ努力することの尊さと同じく、人の価値観とは、人それぞれ違っていて当たり前ということ知っておくこと。これも大事だということだったのです。誰でも自分の周りにはいろんな人がいる。それぞれ価値観も違う。そんな中で互いに尊重し、理解し合うことができる人になりなさいということだったのです。

そこで、こんな言葉を思い出しました。

挑戦とは 一人だけで頑張って一人だけで成果を得ることではなく、常に他者の手助けと共にあるもの。

挑戦とは 相手を打ち負かして競争に勝つことを意味するのではなく、他者の立場を想像する力と、他者と協力しながら新しいものを生み出していく営みである。

挑戦とは ときに孤独なものだが、一人だけで生きている人間はどこにも存在しない。常に周囲の人とのつながり、他者とのコミュニケーションを大切にすることで成されるものである。

 

今年も皆さんにとって、クラスの、部活の仲間と一緒に励まし合いながらの挑戦の1年でありますように。私も一緒に挑戦していきます。

 

理事長 富吉賢太郎


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