清和の窓から

2023.07.04

No. 78 「サル」と「人間」と「家族」

「二足歩行」「言葉の獲得」「家族」。

これが遠い昔遠い昔から気の遠くなるような時間をかけて、サルが人間に進化していった三つのキーワードだそうです。

当たり前だと思っていた「二足歩行」が進化の重要なキーワードだとは驚きですね。また、言葉の重要性は分かっているつもりですが、考えてみると、便利な情報伝達ツールが発達した現代社会は、面と向かって言葉を交わすことが少なくなって、極端ですが、メールだけで済む一日だってありますし、家族という絆も微妙に変化しているように思えます。

こんな現状について、〝サル博士〟として知られた河合雅雄さん(京大教授・故人)は「これは人間が人間であることを放棄しているような気がします」と語っておられたらしい。

およそ6000種類もいるほ乳動物のピラミッド。その頂点の位地にいるのが霊長類に分類されるヒト(人間)、サル、ゴリラ、オランウータン、チンパンジー。その中でも人間だけが他と違う進化を続け、高度な文明社会を築き上げた特別な存在となっているのは、どんな動物も人間のように優れた能力を手にして進化することはできなかったからだそうです。それはなぜでしょう!

以前、河合さんの講演会で聞いたことですが、その理由がとても分かりやすかったので、お話しを再現してみます。

ある日、冒険心の強いサルの一群が森からサバンナにおりてきた。時は今から500万年ぐらい前のこと。場所はアフリカ大陸。そこにはいろんな動物がいて危険がいっぱい。そんな天敵に打ち勝って生き延びていくには知恵と工夫が必要になった。手強い天敵から身を守るには逃げ足だけでなく撃退法も必要になる。そのためには元々体についていた4本の足を、前足と後ろ足ではなく、二つの足と二つの手にして使う方がはるかに有利になった。

そして、ある一群がいつしか二本の足で立って歩くように。すると、どうしたことでしょう、大脳が大きくなって、結果として考える、知恵も出て、言葉の獲得につながっていったのです。また、サルの世界は乱婚社会で「両親とその子どもたち」という家族概念はなく、言葉も持たないのです。

なるほど、私たちが普通に誰とでも言葉を交わし、分かち合い、普通に家族と寝起きできる日常こそが、サルから進化した人間が人間であることの礎、本元といっていいようですね。人間であることの尊さが少し分かったような気がしませんか!

理事長  富吉賢太郎


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