清和の窓から

2022.08.24

No.64 NHK杯放送コンテスト日本一! 報告会あいさつ

先日、高校放送部の優勝報告会が本校大会議室で開かれました。優勝作品の披露だけでなく作品の主役である佐賀市営バス運転手の時盛二三男さん(68)も出席していただきま、本当に感謝、感謝です。以下、あいさつを紹介します。

NHK杯全国高校放送コンテスト優勝おめでとうございます。

こういう晴れの報告会を開くことができ、本当に嬉しく思っています。そして、今日は優勝作品の主役である、時盛二三男さんをお迎えして、一緒に喜びを分かち合う事ができる、最高です。時盛さん、ご出席、誠にありがとうございます。

 

この後、優勝作品の披露がありますが、事前にこの作品を聞きながら、私はいろんなことを考えました。前回のコラムにも書きましたので、繰り返しになりますが、繰り返しになっても伝えたい。私は、心優しき時盛さんをテーマに作品をつくろうと思った放送部の視点、その発想に拍手を送りたいと思います。

 

人のやさしさ、思いやりが見逃されていく社会で、皆さんは、時盛さんのやさしさ、思いやりにハッと気がついた、そして見逃さなかったということです。これからいろんな事が待ち受けている世の中を生きて行く上において、とても大事な、やさしさや思いやりの心が、皆さん自身の心の中に、しっかりあったと言うことです。これは素晴らしいことです。たとえ、優勝できなかったとしても、そこがすごいと思います。

 

それと、もう一つは時盛さんの、業務の日常に、誰もが学ばなければいけないということです。

バスの運転手さん、前をしっかり見て、乗客の安全を第一に運転すること、これが一番です。とにかく安全第一です。時盛さんは、安全運転はもちろんのことですが、必ず、バスに乗って来る人、降りる人に挨拶をされます。

「おはようございます」「お疲れ様」「気をつけてくださいね」。毎日、工夫をしながら語りかける。安全運転に徹していれば、たとえ挨拶はしても、しなくても、誰からも問われることはない。でも、時盛さんは、お客さんたちへの挨拶を欠かさない。それは、時盛さんの心の中に、バスに乗って来る人たちへの、温かい眼差しが、しかと、確かに、向けられているからなのだと思うのです。

時盛さんは、きっと、バスを利用してくれている人たちの中にはいろんな人がいるはずだ。恐らく、元気な人ばかりではないだろう。体の不自由な人や、何とはなく、むしゃくしゃしている人がいるかも知れない。そんな思いをめぐらし、ハンドルを手にしながらも、誰とはなく自然体で語りかける。

 

「今日は月曜日ですね。がんばりましょうね」

こんなアナンスを耳にすると、中には、「そうだ、もう嫌なことは忘れよう」と思う人がいるかも知れない。時盛さんは、そう思うから、自然と言葉が生まれ、語りかけを続けておられるのです。

世の中には、しても、しなくても、誰からも問われることはない。そんなこと、いっぱいあります。でも、自分はする、してみよう! これが大事です。

 

私は、いつも、信号機のない横断歩道を歩くとき、車が止まって待ってくれていたら、ちょっと急ぎ足、小走りで渡ることにしています。横断歩道だから、ゆっくり歩いて渡っても、何も悪いことはない。でも、待ってくれている車を目にしたら、ちょっと急ぎ足、早く渡って車を通してやろうという気持ち。

 

これは価値観の違いで、意見もあるでしょうが、その急ぎ足の気持ちこそ、人のやさしさ、思いやり、社会の潤滑油でなないかと思うのです。もちろん、時盛さんが、そのことを意識しようと、しまいと、あの味のある語りかけは、今や確実に、佐賀市民の貴重な、何モノにも代えがたい潤滑油になっているのは間違いないと思うのです。そして今回、そんな時盛さんの見えない心の中を、見事にすくい取ってくれた放送部の快挙を清和学園全部で讃えたいと思います。

 

放送部 日本一 本当に、おめでとうございます。

 

理事長 富吉賢太郎


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