本のある風景

2021.03.15

No.37 山中伸弥・著, 平尾誠二 惠子・著 「友情」

かの有名な武者小路実篤の小説『友情』は、一人の女性をめぐって揺れる脚本家の青年二人の恋心と葛藤を描いたものだが、本書は、日本を代表するラガーマン平尾誠二と、iPS細胞で知られるノーベル賞受賞者・山中伸弥という、かっこいい二人の固い絆がぎっしり詰まったノンフィクション。

平尾誠二は5年前、53才でガンで逝った。荒れた無名の高校ラグビー部が全校選手権で優勝するテレビドラマ「スクール・ウォーズ」のモデルとされる伏見工業高校ラグビー部出身で、同志社大で史上初の大学選手権3連覇を達成。当時、史上最年少で日本代表に選出された平尾。英国留学を経て神戸製鋼の日本選手権7連覇にも貢献。まさに日本ラグビー界のレジェンドである。

一方の山中伸弥は、誰もが知る世界の医学界を代表する研究者で、現在は京都大学iPS細胞研究所所長で同研究財団理事長。2012年ノーベル生理学・医学賞を受賞している。

同い年の二人は40を過ぎて初めて出会い、意気投合。しかし、出会って間もなく、頑健なスポーツマン平尾は胆管ガン発覚。それも「余命3カ月」という深刻な事態。「先生、俺どうやらガンみたいです」

平尾からの一本の電話。本書は二人の男が挑んだ13カ月間に及ぶガンとの壮絶な戦いの記録だが、タイトル通り、友情とはかくも気高く、美しく、崇高なものなのかを教えてくれる。

若い皆さんには、闘病など無縁のものかとも思えるが、ページをめくれば、人としてとても大切なものが学べると思う。三学期が終わり、春休みになってからゆっくり読んでみたらいいかもしれない。

理事長 富吉賢太郎

2021.03.15

 


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